既了庵分室

如月一月の雑記

雑記13_『梁国落日記』あとがき

(推奨BGM:ゴーストアレイ - 廉 feat. 初音ミク
一遍やってみたかった。

さて。冗談はさておき。
拙作、『梁国落日記』が完結しました。

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着想だけなら八年前、「老史官」を最初に書いたのがもう六年以上前になります。
それを仕立て直したのが昨年の一月。
たかが五話、二万字に一年半かけたのかコイツ……。


……まあいいです。そのあとがきになります。
さて、『梁国落日記』ですがこれは「架空の世界の架空の歴史書梁書』に書かれたエピソードを抜粋して現代に訳した小説」という体裁です。
もうこの時点でかなり間口が狭くしている気もします。とりあえず各話ごとに語るとします。
ご興味あれば、どうぞご笑覧あれ。


・老史官
全ての始まり。大本は学生時代の部誌掲載とかでした。改稿はしたものの基本的な筋が変えようがないのでさて、どうなのか。
一線を退くはずの年齢になりながらその契機を得なかったが故に死んだ人の話です。「史家の生き様」とそれ故に「全てを語る」が目的の話。なのでこれだけ読めば早い話『梁国落日記』の「結末」は分かるという、そういうお話。
彼の語る史家の生き方というのはもう神話・伝承の世界の話なんですよね。それを現実、彼らの生きた現代でやろうとして死に、そして歴史になった人物。

 

・大樹将軍
全体の中で最も中身のない話。これは先に述べた通り架空の種本『梁書』の記述の更に抜粋、という体裁のためです。故にただ一戦、彼の名を不動にしたとされた出征だけを書くという。分かりづらい。
元ネタはまあ、そのままなので気が向いたら調べてみると割と簡単にたどり着くかと。肝は彼の副将。この人物の存在で彼は大成したのですが、それは史書に出ない事実。故にそれを息子の目線だけで表現しようとしました。
現実でもあるじゃないですか。「優秀だったようだし記録もあるけれどいまいち著名なエピソード以外はなにやってたんだかいまいち明確でない」人物。あの枠。

 

・偽帝
梁の屋台骨を叩き折った役柄の人物。大体こういう役柄ですと基本的には野心を頂いて(少なくとも『梁書』ではそう書かれているでしょう)、とかなのですがなんかしっくりこない。故にそれを「先祖から命じられた」と解釈した。
こいつはそれを理由に年食ってもう死ぬ、というのが分かってはっちゃけちゃった存在です。親父がそんな精神状態にいっちゃったことに気づかない、気づけなかったその一事だけで彼の息子は「英傑」足りえないわけです。で、本人は自己満足するところまで暴れたのでそれで勝手に死ぬという。
このお話は史書に書かれていない描写ばかりです。理由は楚、というか高固の存在。
何故なら、梁という歴史上の存在ではなく、楚という現代の存在からの目撃者がいるから。
そういう役どころのお話でもあります。

 

・鈍太守
問題児。書くのに一番苦労した。全体の中での役回りは「大樹将軍」と同じですが、単独で伝を立てられていないレベルの人物。つまりは小物です。
が、その行動が現代どころか未来の象徴たる「楚の太子」を相手取って梁の最期の「伝説」となるわけです。
それに比べればこの小物の親父への反抗心とか兄への劣等感とか、楚太子の父王との違いによる「平時の名君」風な印象なんてものは些事です。

 

・譲帝
本題。正直これと老史官だけ書けば十分といえば十分だった。
現実世界における漢献帝ポジといえばそう。経緯は別物でしたが、この世界においては譲帝の故事に従って「禅譲」が行われるようになるのでしょう。
すべての負債を押し付けられた若者。負債なのは分かった上であえて触れなかった人物。それでありながら本当の最期の責務だけは果たした男。
その原因が責任感でもなんでもなく、己以外に寄る辺のない女だったわけですが、史書には当然そんなことは書いてない。
さらに言えば、その女を気に掛ける原因は死んだ前の女という。
「偽帝」と同じく、高固がいるから、彼の内面を書ける話。

 

さて。とりあえずざっと語りました。
皆々様の印象とどうだったか、教えて頂ければ幸い。そうでなくても参照になれば幸い。

 

というあたりで、本日はおしまいです。
では、また。